先日、南大東島産のサトウキビを使ったラム酒づくりを題材にした小説『風のマジム』が映画化されるというニュースを目にしました。
映画の公開は2025年夏のようです!主演は伊藤沙莉さん。
南大東島産のラムがあるのは知っていましたが、それを題材にした小説があることは知らなかったので、ぜひ読みたいと思い手に取ってみました。
今回は小説版『風のマジム』を読んで思ったところを書いていこうと思います。
※ネタバレを含みますので、これから読もうと思っている方は気をつけて下さい。
沖縄ラムが飲みたくなる!(読後感)
ラムを飲んだことがある人もまだ飲んだことがない人も、きっとラムを飲みたくなるはずです。風に吹かれてザワザワと揺れるサトウキビを想いながらラムを飲む。そして舞台となった南大東島を訪れたくなります。
『風のマジム』は、沖縄のサトウキビで作られた初めてのアグリコール•ラム「COR COR(コルコル)」の開発までの過程、その実話をもとにしたフィクションです。
フィクションといっても、製造販売するまでの登場人物たちの熱い思いや努力がもたらした沖縄ラムの完成までのストーリーを読むとやはり胸が熱くなります。
物語の主人公、伊波まじむのモデルは、「COR COR(コルコル)」を製造する株式会社グレイス•ラムの代表•金城祐子さん。「COR COR(コルコル)」の誕生は2004年で、誕生からまだ20年しか経っていないと思うと、その開発のワクワク感や熱さがまだ新鮮に感じられます。この20年間でこのお酒も育ってきたことでしょう。
もう一つ熱いことがあとがきに書かれています。
2004年に当時カルチャーライターだった原田マハさんが、グレイス・ラムでラム酒づくりに奮闘中の金城祐子さんにインタビューをした際に、「今から五年経って、金城さんのラム酒が多くの人々に飲まれ、そして私が物書きになっていたら———『沖縄産ラム酒を造った女性』の小説を書いてもいいですか?」と尋ねたそうです。
そして、2010年12月に小説の単行本が刊行されました。
この小説が出ていることが、原田マハさん、金城祐子さんお二人の約束が果たされたという種明かしとなっているのです。素敵なエピソードです。
アグリコール・ラム
沖縄ラムは、1961年ヘリオス酒造(名護市)がラム酒の製造販売を開始しました。その後、「風のマジム」のモデルとなったグレイス・ラム(南大東村)が2004年に製造販売した「COR COR(コルコル)」が沖縄のサトウキビで初めて作られたアグリコール•ラムです。
では、アグリコール・ラムとは一体なんでしょうか。
”アグリコール・ラムは、一般に流通しているインダストリアル・ラムと区別されている。インダストリアルはさとうきびのしぼり汁から結晶化させた精製糖を採取した、糖蜜と呼ばれる残りの汁を原料として発酵・蒸留させて造られるのに対し、アグリコールはさとうきびのしぼり汁をそのまま水で薄めて発酵させるものだ。その分、豊かな香りと深い風味が味わえる。”(「風のマジム」本文より引用)
なるほど。アグリコール・ラムは精製糖を分離していないので香りや深みが出る、贅沢なお酒なのですね。
その他の沖縄産ラム酒
ヘリオス酒造、グレイス・ラムに引き続き、2011年には伊江島産のラム酒「イエ ラム サンタマリア」も製造販売を開始します。沖縄産のラム酒のラインナップ(2025年時点)を確認してみました。
黒糖酒・ヘリオスラム・TEEDA WHITE(ヘリオス酒造)
沖縄初のラム酒。ヘリオス酒造は1961年、ラム酒の製造から始まった、沖縄県名護市に本社を置く日本の酒造メーカー。今では6種類のお酒(泡盛、リキュール、ウィスキー、スピリッツ、発泡酒、地ビール)を製造する総合酒類メーカーです。
COR COR(コルコル)(グレイス・ラム)
2004年に沖縄の離島で初めて製造されたラム酒。沖縄初のアグリコール・ラム。上でも書いたように、金城祐子さんが立ち上げた南大東島のグレイス・ラムが製造。COR COR誕生のもう一人のキーパーソンは、創業から現場で牽引してきた、工場長の玉那覇力(たまなはつとむ)さん。泡盛づくりの名手だった玉那覇さんと金城さん、二人の出会いがあって誕生したようですね。玉那覇さんがモデルのキャラクターも「風のマジム」に登場します。
イエラムサンタマリア(伊江島蒸留所)
沖縄県北部の離島・伊江島のサトウキビの搾り汁からできたラム酒。2011年に販売開始。「伊江島蒸留所」はもともとバイオエタノールの実証実験の施設だった場所。伊江島蒸留所のすごいところは、アグリコールラムが一年中製造できる点。一般的には、サトウキビの収穫時期にしか製造ができないとされていましたが、こちらでは特別な製法でサトウキビ汁を保管することに成功。これによって、いつでもアグリコールラムがつくれるという、世界でも希少な蒸留所なのです!工場の見学も可能なようです(詳しくはイエラムサンタマリア公式HP)。
MAKUGAN(多良川)
沖縄県宮古島で造られるラム酒「MAKUGAN」。2020年に販売開始。宮古島にとことんこだわったラム酒のようです。宮古島の水と、宮古島の酵母と、宮古島のサトウキビで造っています。
ちなみに、「マクガン」は宮古の方言で「ヤシガニ」のこと。宮古島でなじみ深い生き物である「マクガン」、ラベルにも描かれています。ヤシガニは現在、絶滅危惧2類に指定されているようです。宮古島の豊かな自然を大事にしたい、大切にして欲しいという気持ちも込められています。
込めています。
THE OKINAWA ISLANDS RUM(瑞穂酒造)
那覇市首里にある瑞穂酒造が、沖縄県内で作られるサトウキビと、それをもとに作られる黒糖の2つの素材を活用し、未だかつてないラムをつくり、未来へ繋ぐプロジェクト「ONERUM」プロジェクトを発足して造られたラム。
Blended Islands Series、Single Island Series、One Island Seriesの3シリーズで展開しているようです。タイトルのTHE OKINAWA ISLANDS RUMはそのうちのBlended Islands Seriesにあたり、離島8島の黒糖をブレンドした沖縄の魅力を詰め込んだラムのようです。Single Island Seriesは、沖縄で黒糖をつくる製糖工場がある離島8島(粟国島、伊江島、伊平屋島、西表島、小浜島、多良間島、波照間島、与那国島)から、1島ごとにラムを作るシリーズ。One Island Seriesは、自社ファームのさとうきびを中心に全く新しいアグリコールラムを製造するもののようですが、まだ製品としては出てきていません。
石垣島ラム(請福酒造)
石垣島の請福酒造が2024年に製造開始したラム。毎年限定生産するアグリコール・ラムとインダストリアルラム(トラディショナルラム)の2種類があります。まだ販売開始したばかりでこれから目にすることが増える商品かもしれません。
沖縄産アグリコール・ラムと一緒につまみたいもの
沖縄産アグリコール•ラムを飲むときに一緒につまみたいものがいくつかあるのでピックアップしていきます。
沖縄料理
小説の中でもラムと沖縄の料理が意外と合うことが描かれていました。沖縄料理には泡盛かオリオンビールという定番はありますが、ラムもぜひ試してみたいです。ゴーヤチャンプルーやソーキ、しっかりした味付けの料理とは間違いなく合いそうですね。
チョコレート
前におすすめの沖縄のチョコレートと合うお酒3選を紹介しましたが、チョコレートとラムの相性は抜群です。色々な組み合わせを試してみたいですね。
黒糖
ラムの原料サトウキビから作られる黒糖、こちらも合わせてみたいですね。日本酒に米が合うように、ラムには黒糖が合うのではないでしょうか。黒糖を使ったスイーツは間違いないと思います。
まとめ
小説『風のマジム』を読んで、沖縄ラムや南大東島、島に吹く風に思いを馳せながら、ラムを飲んでほしいです。2025年夏に公開する映画より前に原作を読んで、映画公開に備えるのも良いかと思います。
一緒に沖縄ラムを楽しみましょう。
おしまい
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